2021年 剛毅で頭脳明晰な兄のフィルをベネディクト・カンバーバッチが演じています。「ピアノ・レッスン」のジェーン・カンピオン監督作品。

あらすじ

大牧場主のフィル・バーバンク(ベネディクト・カンバーバッチ)と弟ジョージの兄弟は、地元の未亡人ローズ(キルティン・ダンスト)と出会う。

ジョージはローズの心を慰め、やがて彼女と結婚して家に迎え入れる。そのことをよく思わないフィルは、2人やローズの連れ子のピーターに対して冷酷な仕打ちをする。

しかし、そんなフィルの態度にも次第に変化が生じる。




感想

いったい、原作とは主題が一致しているのだろうか。

この原作が書かれたのは1967年。時代背景は1920年代ですが、書かれた年代も昔なので、2021年に映画化するにあたって、内容を擦り合わせたところはあるでしょう。

しかし、そういう意味合いではなく、何となく「違和感」がついて回ります。

まずもって、この映画は、批評家の方たちからは絶賛されており、確かにその重々しい展開、綿密な演出、淡々と小さなエピソードが綴られるそのどの場面からも目が離せなくなる、実にレベルの高い作品です。

さすがカンピオン監督、と思わせてくれました。だがそれだけに逆によくわからない。

剛毅かつ頭脳明晰なフィル。カンバーバッチはかなり深く掘り下げて役作りをして臨んだと思われます。それなのによくわからない。

原作小説では、真面目で仕事一筋で生傷が絶えない兄と、おとなしくて鈍くさい弟は、仲がいいというほどでは無いけれど深いところでつながっている存在というように描かれています。

映画ではフィルの人間性が「変な人」として描かれているように思えます。そうなると、この映画のサスペンス性が薄まってしまうのです。

小説を読んではじめて理解できるさまざまな背景や主要人物の人間性。それを映画の短い時間で表現するのには限りがあったかもしれません。

さらに、ラストシーンがいやに「静かに」終わり、すべては観客に投げかけられる。だから観客は「え?え?」と戸惑い気味になってしまいます。

いい映画だっただけに、どうしても残念でたまりません。せめて、ラストシーンでガツンと清算してくれたら・・という思いがずっとたちきれないでいます。

それでもこの映画は様々な映画賞の候補になったり、受賞したりしています。「いい映画」ぽい雰囲気を醸し出した映画、と私は位置づけたいと思いますが。