2019年 ハンガリー映画。まずはホロコーストの史実をちゃんと理解していることが前提になります。そのうえで、残された人たちが「愛」によって再生していくさまに心が打たれるのです。

あらすじ

1948年。ホロコーストを生き延びたものの家族を失った16歳の少女クララは、42歳の寡黙な医師アルド(カーロイ・ハイデュク)と出会う。

クララ(アビゲール・セーケ)はアルドの心に自分と同じ欠落を感じ取り、父を慕うように彼に懐く。同じくホロコーストの犠牲者だったアルドも、クララを保護することで人生を取り戻そうとする。

しかしソ連がハンガリーで権力を掌握すると、世間は彼らに対してスキャンダラスな誤解を抱くように。そして2人の関係も、時の流れと共に変化していく。映画com.

感想

ホロコースト。第二次大戦中にナチによって行われたユダヤ人の大量虐殺。ハンガリーでは56万人もの方が犠牲になりました。

クララも医師のアルドも、家族をすべてホロコーストで失っています。その様子が克明に描かれることはありませんが、どのような悲惨なことが行われたのかは、静かでおだやかな時間であればあるほど、フラッシュバックのように浮かんできます。

この巧妙な仕掛けにより、家族を失った42歳の男性と16歳の少女の、深い心の傷がだんだんと見えてきます。

禁断の愛などではない。2人の愛情は家族であり男女であり、人間への愛。

いっしょに過ごす時間のなかで、心の傷を癒そうとしています。特別な愛なのです。

 

物語は最初から最後まで、ほんとうに静かに推移します。しかしカーロイ・ハイデュク演じるアルドの繊細な表情が、物語の総てを語っています。

ラストシーンのアルドの、これから明るい兆しが見えたときのこみ上げる感情。しかしそれは眼の動きや頬の動きだけの些細な表情変化。瞬きしないで見てないと見逃すほどの演技ですが、この数秒がこの映画のクライマックスです。

アルドを見つめるクララの瞳も、深い感慨とともに、明日への希望に満ちているのでした。