2015年公開。トロント映画祭など数々の映画賞を受賞。カンヌ映画祭「ある視点」部門オープニング上映作品。ドリアン助川の同名小説が原作。

あらすじ

桜の咲き乱れる道にある、小さなどら焼きの店「どら春」。過去のある店長がひっそり営んでいた。
ある日、ひとりの老婆が「アルバイト募集」の張り紙を見て「私でも、雇ってもらえますか」と尋ねてきた。店長は断ったが、老婆は何度も訪ねてくる。そして「これは私が作ったんだけど」と容器に入ったものを差し出す。

一口舐めてみると、それはたとえようも無く美味しい餡子だった。老婆の名は吉井徳江。徳江は病気のため手が曲がって不自由だった。

「どら春」でどら焼きのあんを作ることになった徳江。どら焼きのおいしさに「どら春」は大繁盛する。しかし
徳江の病のことを、「どら春」のオーナーが知ることになる。人々はまだ、ハンセン病という病に対して偏見を抱いているのだった・・。




感想

過去を抱え借金を抱え、どら焼きをなんとなく焼いて生きていた店長の千太郎。お店の常連客で中学生のワカナも家庭の事情を抱えている。そんなふたりが、何十年ものあいだ施設に隔離されて人生を過ごしてきた徳江に出会いました。その後ふたりは、人生に光を見出すことになります。

徳江が過ごしてきた人生は、無理やり隔離されて、自由に生きるということを許されなかった日々。でも徳江の作る「あん」はふくよかな小豆の香りとやさしさに満ちていました。

「治療中のハンセン病患者からは感染しない」ということ。このことを知っている人が今でもどれだけいるでしょう。

その長い抑圧された月日の中で、「あん」をこの上なく美味しく作ることができるようになった徳江。いつも樹々や花に話しかけるように、小豆にも同じように話しかけ、小豆の声を聴くように「あん」を練り上げていく。そんな徳江はほんとうに楽しそうに店で働いていました。しかし結局お店を辞めることになってしまいます。

世間の目から徳江を守れなかった自分を責める千太郎。それでもいつしか千太郎は自分の生きていく道を見つけます。徳江の「あん」を今度は自分が作り続けていくこと。そのとき千太郎の瞳はまっすぐ前を見つめていました。ワカナも徳江の思い出に導かれるように、これからを生きていくことでしょう。

必要以上のナレーションは入らない淡々とした映画です。見終わったときから、毎日少しづつしずかに心に染み込んでいく・・そんな作品でした。


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