2022年 ロックバンド「クリープハイプ」の尾崎世界観が自身のオールタイムベストに挙げる、ジム・ジャームッシュ監督の代表作のひとつ「ナイト・オン・ザ・プラネット」に着想を得て書き上げた新曲「Night on the Planet」に触発された松居監督が執筆した、初めてのオリジナルのラブストーリー。映画.com

あらすじ

1台のタクシーが東京の街を走っている。運転手の葉(伊藤沙莉)に後部座席の客が声をかける。「あたし今日誕生日なの」「え、そうなんですか」

その日は7月26日。葉の恋人だった照生(池松壮亮)の誕生日でもあった。

物語は、7月26日という日を切り取って、6年後である現在から1年ずつ遡っていく。それは何でもない一日もあれば、2人が大切な会話を交わした日もあった・・。

感想

曲から着想を得ただけに、「Night on the Planet」があまりにも映画のラストにはまっていて鳥肌が。

7月26日という日に焦点をあて、1年ずつ遡っていく。2人がまだ付き合っていない日のこと、付き合い始めることになった日のこと、何もなかった日のこと、そして気持ちがすれ違って別れが近い日のこと。

ふっとしたときに思い出してしまう、何でもないエピソードや、別れる岐路になる仲違い。

それらをことさらにドラマチックに時系列を追うのではなく、デジタルの日付が器械的に動くかのように7月26日を定点でみせる。この発想はすばらしくいいです。

格子の窓から見る景色のように、定点のエピソードだけで十分ストーリーを繋げることができるのはそれが人間の脳のしくみだから。全部言わなくてもわかる。言わないほうがわかることも、ということですね。

少しネタバレ

演技の上手い2人ですが、特に池松壮亮は演技の幅がとてつもなく大きい役者さんです。

クライマックス(とても静かな)で葉のタクシーを見つめるシーンの照生(池松壮亮)の少しだけ潤んだ瞳の演技。

タクシーの型が変わっているのと遠くて誰が乗っているのかわからないはずなのに、照生はタクシーのほうをじっと見つめています。その数秒間の瞳の演技がこの映画のすべてでした。

ちょっと思い出しただけ。(だけどこの恋愛はとても素晴らしくて大きくて本物だった)などという言葉が続くのかどうかわからないけれど、それはきっとみんなの胸の内に。